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機械仕掛の恋17


 そのタイミングを丁度みはからったかのように、内線が入る。
 ルルーシュを抱きしめたばかりだと言うのに、お互いに視線を合わせて苦笑すると、諦めて鳴り続ける内線を開いた。
「おーめーでーとー! ナイト・オブ・イレブンとの対面は済んだかな? まあそのまま戦術なりの打ち合わせしてて、適当にこっちは発艦するから。ああ、えーと到着までは五時間かな」
 これはどういう意味なのだろう。
 意味を計りかねていると、ルルーシュが前に立ち、
「ご配慮に感謝します。では、よろしくお願いします」
 と告げて内線を切った。
「えーと、今のって?」
「おふたりでごゆっくりって事だろう」
「やっぱり、そう?」
 そう思えば、赤面する。彼に執着している自分を彼等は良く知っている。
 そこへおふたりでごゆっくり――などと。逆に手を出しにくくなる。
「せっかくそう言ってくれているんだ。ゆっくりさせてもらおうか」
 薄く笑みを浮かべて、ルルーシュはソファへと座る。そして自分を呼び寄せる。
 呼ばれるまま従い、彼の横に座れば違うと言い、ああ、とゆるく首を左右させて彼が席を立った。そして自分の座る腿の上に座った。
「――ル、ルーシュ」
 挑発的な笑みを浮かべ、彼は自分を見下ろす。
「ゆっくり、とはこういう事だろう?」
「戦術は?」
「完璧だ。それは後で伝える。順番が後先になるだけの事だ――ならば、先に俺はスザクが欲しい」
 衒いない言葉に、スザクは赤面するしかない。
 確かにずっと求めていた。
 彼が目の前にいる事実だけでも歓喜で肌がざわめくと言うのに、こんな至近距離だと、どうしていいのか分からなくなってしまう。以前なら普通の事だった。たった半月近く離れただけでどれだけ自分の思いは募っていたと言うのだろう。その事実に呆れさえする。
 まだ呆然としたていの自分へ、ルルーシュは小首を傾げて怪訝な顔をする。
「どうした?」
「いいや、君がこうやってここにいるって事に、まだ慣れない」
 素直に告げれば、彼は破顔した。
「安心しろ、お前の作戦には殆ど俺が同行することになっている。これからは――ずっと、一緒だ」
「――本当に?」
「ああ。ナナリーを説得するのは少し骨が折れたが、最終的には受け入れてくれた。だから、スザクと一緒にいれる」
 ナナリー、と呼ぶ発音がひどくやわらかい。とても愛しているのだろう。
 それと同じ響きで自分の名も呼ばれているのかと思うと、自然に顔がほころんだ。
 そして、ぎゅっと背中に手を回し抱きしめる。膝の上にまたがっている体勢上、彼の胸に顔を埋める事になってしまったが、それでも良かった。彼の低い体温はラウンズ特有の格式張った制服のせいで良く分からなかったけれども、抱きしめた形は知っているもので、求め続けていたものだった。
「好きだよ、ルルーシュ。会いたかった」
「ああ。俺も会いたかった。気が狂いそうだったよ」
「それは僕の方だ」
 互い譲らずにいると、結果的に笑いながらではあるがお互いを認め合った。
 そして、彼の胸から顔を離す。そして少し高い場所にある彼の頭を抱きしめると自分の元へ引き寄せ、唇を重ねる。
 簡単なキスで終わらせるつもりはなかった。
 そのまま唇をこじ開け、彼の口腔へ押し入る。彼とて分かっていたようで、そのまま挿し入れた舌は手厚い歓迎を受けた。
 甘く噛まれ、そして吸われる。どちらが愛しているのか分からない状況だ。むしろ自分が彼を感じて感じて仕方なくさせてやりたいのに、むしろこちらが愛撫を施されている。
 形勢逆転を狙い、彼の舌をこちらへと招き直す。そして抱きしめていた腕をゆるめ、彼のマントをそのまま外し床に落とす。ラウンズの正装など全員同じような作りだ。脱がす事など苦もない。
 自分の口腔内へ入り込んできた舌は、今度はスザクの口蓋を舐めたり歯列を舐めたりと忙しい。それを咎めるように舌を絡め、甘く噛むと彼はひくんとからだを震わせた。
 舌をじんわりと舐め、その合間にジャケットも脱がせてしまう。
 インナーはジップアップだ。脱がすのは簡単な事だった。
 床に落ちる度ばさりばさりと音がするのは、それぞれの衣服が重いせい。こんな華奢なからだには重すぎる衣服だった。自分が買ってやった服の方が似合っていたのに、なんて思うのは単なる独占欲だろう。
 一度、唇を離す。すると飢えたようにルルーシュは離れた唇を追って再び重ね合わせて来た。
 薄く目を開くと、彼の瞼は閉じられたままだ。だが頬は淡く紅潮し、真っ黒の睫がふるふると震えている。うっすら涙のようなものが目の端にたまっている事に気付き、ぞくりと背筋が震えるような感覚を覚えた。
 インナーも脱がせ、彼の上半身を素っ裸にする。
 ああ、知っている体温だと安心した。
 少し低い体温。手のひらで確かめながら、うなじから背中、肩胛骨を辿った後、背骨のひとつひとつを確かめるように動く。
 薄く目を開くと、涙はそのまま透明な筋を描いて一粒落ちていたようだった。
 感じているらしい。彼が脱ぐ時に一度外した腕は、今度は強いくらいにスザクの頭を抱きしめている。
 背骨の際までを辿り、そのまま脇へ回す。
「……ぅんっ」
 びくん、と彼の体が弾んだ。
 まだ弱すぎる快感の筈だ。でも、彼に取っても久しぶりの交じわりはいつも以上に感じるのかもしれない。今の自分が早くも余裕がなくなっているのと同じように。――いや、そうだといいと思った。
 手を、そのまま前面へ回す。固く小さく尖った場所を執拗に撫でれば、苦しそうなうめきが絶え間なく漏れた。
 唇を外し、そこをそのままぺろりと舐め、やんわり歯を立てる。
「や……ぁあ…っ」
 きゅ、と髪を握られた。
 その指先が肌に触れ、そんな場所が感じる筈ないのにぞわぞわと肌にさざ波が走るような気分になる。
 そのまま乳首を徹底的に責め、その合間に手を伸ばし、彼のボトムをくつろげる。
 そこはやはり固く屹立していた。
 ああ、やはり彼もまた感じていたのだと分かり幸せな気持ちになりながら手淫する。
「あ…っ、ああっ、すざ、く…ぅ……っ」
 胸を押しつけるように、そのまま体重が自分の方へ傾いて来る。
 一度いかせた方がいいだろう、と思った。
 アンドロイド――セクサロイド相手に、何をおと思うだろう。だが彼はどこの誰よりも人らしい。その辺りの人よりもずっと人なのだ。
 それを忘れてはいけなかったし、むしろ逆でスザクなどは彼が作り物だと言う事を忘れてすらいた。
「や、やあ、も……い、く……から…っ、すざ…っ」
「うん、いって」
 そして、ちゅ、と音を立てて彼の肌へ吸い付くと離す。
「やぁ、んっ」
 ぎゅ、と抱きつく力がこもった。
 そしてそのまま、手の動きのままに彼は吐精する。とろりとした液体がスザクの手のひらに広がった。
「………ぁ……は、ぁあ」
「服が、汚れちゃうね。脱ごうか」
 手をティッシュで拭うと、彼を立ち上がらせる。しかし彼はふらりと上手く立ち上がる事が出来ない。
 苦笑して、抱きながら自分も一緒に立ち上がった。緩めにしつらえてあったのだろうボトムはそのまますとんと床に落ちる。下着は、自分が手を掛けてずらし、再び座る前に全て脱がせてしまった。
 自分は制服の替えがここには準備してある。汚れても構わないだろうと、ヘンに間を空けてしまう事の方を恐れ、脱衣はやめることにした。
 ただ、苦しくなっている下肢だけはゆるめる。すると、途端顔を出したものにルルーシュは自分の脱ぎ捨てたものでくしゃくしゃになっている床へ膝を突くと、その場所を咥え出した。
「ル、ルーシュっ、いい、から」
 既にいつ暴発してもおかしくないくらいに勃起している。そこへ生暖かい口腔の粘膜と舌使いで、あっと言うまにスザクは後がない場所へ立たされてしまった。
「ま、って……も、で……っ」
 ルルーシュの髪をゆるく引っ張る。
 このままでは彼の口の中に出してしまう。だが、ルルーシュは頑固にもスザクの嘆願を聞き入れてはくれず、むしろ更に愛撫の手は強くなった。
 強く吸ったかと思うと、先端部分だけを舌でくるくると舐める。穿孔をくじるように歯を立てられた時、もうだめだと思った。
「……っん」
 精液がせり上がって来る感覚。その甘い気持ち良さは我慢が出来なかった。
「ルルーシュ……っ」
 どくん、どくんと幾度かに分けて精液が吐き出される。それを全てルルーシュは口で受け止め、全てを嚥下した。
 そして、最後におまけのようにもう一度ひと舐めする。
 それだけでお手軽にほぼ萎えなかった勃起は完全に立ち上がった。
 無言で視線を交わし合った。
 口付けるよりもいやらしく、交わるより純粋な視線だ。
 だけど、先を促している事は分かる。スザクももう後に引ける状態ではない。
 一度達しただけで満足なんて出来る筈がない、彼の体内を知っている以上、それを味わいたいと思わない方が嘘だ。
 そしてその方が心にも優しいと言う事を知っている。
 交接による、心の交換は間違いなく存在するのだ。
 その証拠に、彼は心を取り戻した。
「スザク……大丈夫だから」
「ああ……」
 本当は、最初からほぐして柔らかくするところから始めたかった。だがルルーシュは待ちきれなかったらしい。最初から準備して、体は待ちかまえている。
 ふらつきながら自分の体にまたがると、スザクの屹立を手で支え、自分の体内へと導く。
「あ……ああ、あ……ぁあっ」
「ふ……くぅ……は」
 狭い。狭くて、熱くて、目がくらみそうだ。
「すざ、く、あつ、い……あぁああっ」
 根本まで埋め込んだ瞬間に、ルルーシュの性器が弾み白濁が飛び出した。
「ああ……んっ、く……ふ」
 肩口に頭を埋めている姿がいじましくて、スザクはゆっくり髪を撫でると、そのままキスを求める。彼は素直に従った。
 唇を合わせたまま、スザクはゆっくりと腰を突き上げる。
「…ん、んんっ」
 彼は苦しそうに、濃厚なキスを続けながら喉奥で喘ぎを上げた。
 一度唇を離し、「苦しい?」と聞くと彼はこくりと頷く。ドキリとしたが、「幸せ過ぎて苦しい」などと言うものだから、腰の突き上げは更に強くなった。
「ああっ、……んっ、ああっ」
 そのまま、どんどん突き上げを強くする。自分だって気持ち良すぎて苦しかった。
 彼の良い場所を思い出し、そこを狙えば狂ったように頭を打ち振るい、悲鳴のような声を上げる。
 その事が嬉しくて、同じ場所ばかりを狙えば彼は再び吐精し、また勃起する。
 彼が都合挿入だけで三回いった時に、急にぐたりとし始めた。
「……ルルーシュ?」
 その合間に、スザクも二度いっている。
「も……む、り……」
 ずるり、と体の力が抜ける。
 快楽のあまり、彼の意識が飛んだ。
 既に体勢は変わっている。ソファに寝ころばせ、正常位で内を穿っていたスザクはそのままの動きで達すると、彼の髪を柔らかく撫でた。
 意識を飛ばした彼は先ほどまでの色香を失い、ただの少年のように清らかに眠っているように見えた。
 抱き上げ、部屋に併設してあるシャワールームで彼の体を綺麗にし、内に出した自分のものを掻き出す。その合間に「う、う……ん」と意識を取り戻した彼は、その状況に羞恥を覚えたのか、「そこまでしなくていい!」と声を荒げたが、ほぼ終わっていたので、有無を言わさずそのまま体内までもを洗ってやった。
「スザク……っ」
 また、快楽がぶり返しているのだろう。しかし残念ながらここで交わるには、もう時間がなかった。
 そろそろEUのブリタニア占領区へアヴァロンは到着してしまうだろう。
 恐ろしい事に、五時間近くも自分達は交わり続けていたのだ。作戦の授受もあったもんじゃない。
「後で、ね」
 唇にちゅっと音を立てて重ねるだけのキスを与えて、彼にしゃんとするように伝える。
 彼のラウンズとしての初任務が待っているのだ。
 ルルーシュの実力は知っているけれども、だけど舐められるような事があってはならない。
 これから、自分と彼とは肩を並べて行くのだから。



 やがて、軍港へ到着する。
 ゆっくり着地したアヴァロンは、そこからスライド式の下艦用通路を出す。
 自分の青く空のような色のマント。対して、高貴な、ラウンズでは決して身に纏う事はゆるされないであろう紫のマントは対になって風にひるがえり、一葉の絵を描いた。



終わり
2011.6.22.
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