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Real intention of honesties 正直者達の本音


 バーナビーの瞳から涙がこぼれ落ちた事に、動揺すると同時に昨日の記憶が欠片だけよみがえった。
 彼を泣かせたのはなにもこれが最初ではない。
 同じようないきさつで、同じようにバーナビーの瞳からは涙を落とさせているのだ。
 ――参った、と思った。
 記憶を失った自分を責めたくて仕方がなかった。
 こんな思いをさせたい訳じゃなかったのだ。バーナビーの事が好きだ。愛してる。
 彼が自分のものになんてなる筈がなかったから、最初から諦めていた想いだった。まさかこの歳になって恋愛をするなんて思ってもいなかったから、当然のように戸惑いもしたし動揺もした。だけど、心にしっかり根付いたそれは何をどうしようとびくりともしなかったのだ。
 抱きしめて、その温度にくらくらと目眩がしそうだった。
「バニー。ここじゃああんまりだ。一度会社に戻るか?」
「ええ」
 いくら他のヒーローがいないとは言え、ネイサンは気付いていたから戻っては来ないだろうけれども誰が来るか分からない。この可愛い状態のバーナビーを虎徹は誰にも見せたくなかった。
 会社には早退届けを出そう。
 もちろん、ヒーローとしての招集が掛かれば即座に飛び出す準備はある。
 だが、彼をこのまま手放したくはなかった。
「早退、するぞ」
 車に乗ると、今度は虎徹がハンドルを握った。
「え? 大丈夫ですか?」
「まあ、招集入ればイヤでもこれ鳴るし?」
 左手のバンドをちらりと見れば、バーナビーも笑う。彼の目には既に涙はない。
「電話掛けといてくれないか? 俺が調子崩したから、お前も付きそうって」
 一度会社に戻るつもりだったが、その時間も惜しい気がした。
「え、あ、はい。分かりました」
 バーナビーは素直だ。いつもならサボりなんて許さないだろうに、今日はふたりきりになりたい気持ちがきっと勝っている。多分自分と同じように。
 簡単に携帯で連絡を取れば、優等生のバーナビーの事だ。事実だと信用されたようで早退はさっさと認められた。
「俺んちでいいよな?」
「ええ、いいですよ」
 昨日の続きを再開させるのだ。酒なんかで記憶を飛ばしてしまう前の、その続き。
 一緒に眠ってはいなかった。と、言う事はお互いの気持ちを伝えただけで終わったのだろう。その記憶すらも曖昧なのだから情けなくなってくる。
 きっと、気持ちを伝え合えた事で満足して酒を飲み過ぎてしまったのだろう。容易に想像がついてしまって、我ながら笑えて来る。
「何笑ってるんですか?」
「いや……多分昨日、お前の気持ち聞いて、俺も言えて、嬉しくなって飲み過ぎちまったんだろうなと思ってさ。合ってるだろ?」
「……まあ、そんな感じです」
「やっぱり。あんまり簡単に想像出来るから笑えて来てたトコ」
「そんな事ばかり……」
 はぁ、とバーナビーはため息を落とす。
 そりゃあそうだろう。大事な事を忘れられて、彼は今日一日最悪の気分だったのだろうから。
 でも、それは今から取り戻す事が出来る。
 想いは再びきちんと伝え合えた。
 やがてブロンズステージに入る。虎徹のアパートまでは間もなくだ。
 部屋の状況は散々だった事を思い出す。酒瓶が転がりまくりだ。まずは掃除をしなければいけないのかと思えば、この甘い空気も残念な色に染まってしまいそうだ。
「取りあえず、片付けな」
「ああ……そうですね」
 バーナビーもあの部屋の惨状を思い出したのだろう。
 声のトーンが下がる。水を差すことこの上ない。だが、それでも構わないとの気持ちがお互いにあった。
 車を止めると、こっそりその手を握る。驚いたような顔をして彼は自分を見上げてきたけれども、にっと笑いかけると慌てて顔はそらされたが手はそのままだった。指先だけを絡めるような握り方だ。
 じわりと滲む温度が幸せでならない。
「噂、立ちますよ。あなたの家の傍なんですから」
「構わねぇよ」
 そしてそのまま、ぎゅっとてのひらごと握り込んだ。
「………っ」
 ちらりと見れば、バーナビーの顔が赤い。
 きっと心臓は派手に躍っているだろう。自分だってそうだ。
 鍵を開けて中に入れば、ずいぶんと酒臭い。
「あー、ひでぇな」
「そりゃあ、あんだけ飲んでれば仕方ないですよ」
 取りあえず、残念だけれども手を離す。
 キッチンに向かってゴミ袋を引っ張り出すと、床に落ちていた瓶缶を次々放り入れて行った。バーナビーはテーブルの上を片付けている。
「窓、開けますか?」
「いや、この部屋の窓ってあんま意味ねぇから」
 と、換気扇をつける。
 カランコロンと音を立てながら放り込まれた瓶と缶は、大きめの袋の半ばくらいまであった。
 本当に昨日の自分達はどれほど飲んでいたと言うのだろうか、あの程度の二日酔いでよく済んだもんだと思う。
「色気ねぇよな」
「慣れました、あなたといると」
 バーナビーは笑う。
「ま、そっか」
 確かに自分には彼と違って色気もそんな雰囲気を作る能力も足りない。いや、バーナビーだってそう経験がある方ではないように見える。まあ、揃いも揃ってお似合いと言う訳だ。
 ようやくすっきりした部屋で、今日はミネラルウォーターを持って来て、ソファに座った。
 バーナビーはほんの少し離れた場所に座っている。微妙な距離に、虎徹は笑えてくる。
「ここ、来いよ」
 ぽん、と真横を叩いて示す。
「……はい」
 ぎゅ、とミネラルウォーターのペットボトルを握って、彼は自分に触れんばかりの距離に座る。
 じっとなどしていられなかった。封も開けてなかったペットボトルを投げ出し、そのままバーナビーを抱きしめて、口付ける。
「……っ」
 驚いて見開かれた彼の目は、薄い色のレンズを通しても綺麗な翠だった。
「すまん、我慢とか出来ね」
 一言だけ宣言して、そのままソファに押し倒す。
 唇を今一度重ねると、ふれあうだけでは気が済まず、深いキスを与えた。
 彼はまだ驚いた顔をしたまま、瞬きがやたらと多くなっている。動揺しているのだろう。
 本当は彼にも余裕を与えてあげた方が良いと分かっているのに、衝動が自分を突き動かしてどうしようもない。
 口腔内を舐め、口蓋を舐め、舌を絡める。縮こまった舌を柔らかく舐める事によってほぐし、自分の動きに合わせて舐め合う事に成功させる。
「……っん、んんっ」
 もしかしてこういった経験がないのではないか、と思われる程にバーナビーは奥手だった。
 それとも、自分との行為に緊張しているのか。
 舌を絡めて、それから唇を舐め、キスを中断させた。
 淡い色のレンズの向こうの目は、少しばかりの涙で濡れている。
 そのメガネを抜き取り、テーブルの上に置いた。
「何も……見えなくなります」
「俺だってことくらいは分かるだろ?」
「ええ……」
「なら問題ないだろ?」
 にっと笑う。この距離ならばきっと輪郭くらいは見えるだろう。
 彼の顔がかっと赤くなった。
「僕、あなたと……虎徹さんと、キスしてるんですよね」
「他の誰だと思ってんだ?」
「だって、嘘みたいで」
「昨日だってしたろ?」
「それは酒の勢いみたいなもんで……」
「でも告白し合った後だったんだろ?」
「え、ええ……」
「じゃあ同じだ」
 そして、ぺろりと彼の唇の端を舐めた。
「こっからは違うだろうけど」
 そして、彼のジャケットの前を開け、シャツをたくし上げる。
 見えた素肌に唇を落とした。
 臍、そしてそのままはい上がって乳首まで。
「……っん、ぁ……僕、こっち、ですか?」
「逆がいい?」
「どっちでも……」
「じゃあ、そっちで」
 そして、乳首に歯を立てた。びくん、と彼の体が跳ねる。
 真っ昼間から行う行為でないのは百も承知だ。だが、ストップが効かない。彼が自分のもので、自分が彼のものだという事実が嘘じゃないことを一刻も早く体にまで刻み込みたいのだ。
 ジャケットもシャツも結局は脱がし、白い肌にあちこち跡をつけて行く。しばらくはトレーニングセンターに行けないなと思いながらも、キスマークや歯形を残さずにはいられない。その度々にバーナビーは敏感に反応する。小さな甘やかな喘ぎも聞こえ、耳が犯されている気分になる。
 脇腹を舐めれば、バーナビーは顕著な反応を返して来た。
 体が跳ね、甘い声が止まらない。
「……っんあっ、あ、や……そこっ、くすぐった……いっ」
「くすぐったい? そんな甘い声出して嘘だろ?」
 かぷり、と噛みつき、そして舐める。もぞもぞとバーナビーは逃げるように動くけれども、虎徹はそれを許さない。
「や……あ、ああぁっ、ん」
 そしてボトムに手を掛ける。厳重に締められた二穴バンドのベルトを解き、ボタンとジッパーを緩める。
「……虎徹、さんっ」
「だって、このままじゃあ苦しいだろ?」
 そこはしっかりと既に反応していた。細身のボトムでは窮屈だったに違いない。
 解放したものはしっとりと湿りを帯びていて、温度も高い。
 てのひらで刺激すれば、脇を責めた時とは段違いの反応が返って来た。
「や……っあああっ、あっ」
 既に先走りがぬるりと手を滑らせる。
 塗り込めるようにしながら、屹立したそれを手で追い立てた。
「あ、あぁあっ、あ、…んぁっ、や……ダメ、で…すっ」
 片手だけでは勿体なくて、両手で包み込むようにしてさする。片手で先端を刺激し、もう一方は根本から先端までを扱き上げる。
「やっ! ああぁっ、ああ、んぁあっ」
「いきそ?」
 こくこく、と頷きが返される。
「じゃ、一度いっとくか」
 先端を弄っていた手で、穿孔をくじる。
「ひぁっ」
 そして、強く上下させれば、まるでセックスのまっただ中にあるかのようにバーナビーは喘いだ。
 先端はぬるぬるで、先走りの液は薄く白濁している。精液がもう滲んでいる。いくのは時間の問題だろう。
 そこを、ぱくりと口でくわえた。
「や……っ、こてつさ……んっ」
「ん?」
「や、いや、です、や、っ」
 だがそんな言葉を聞き入れる気はなかった。
 唇をすぼめ、上下させながら舌で先端をなめ回す。くじるように穿孔を抉り、ぬるぬるした場所を刺激する。
 しょっぱい味は決しておいしいものではなかったけれども、こうする事に全くの抵抗がなかった。
 むしろ、さっきよりもずっと感じているバーナビーを見られる事が嬉しく感じる。
「あぁっ、あ、んああぁっ、あっ」
 ひくひくと彼の性器がうごめく。そろそろいくのだろう。
「も……はなし、て、くださ……いく、も、いくから…っ」
「んーん」
 そのまま飲む気でいた。多分壮絶にマズイだろうなとの思いはあったけれども、羞恥に染まるバーナビーの姿がたまらなかったからだ。
「や……ああぁっ、こてつさ、やめ、あぁっ、やめて、もう」
 きゅ、と絞った唇で上下させる。
 びくびくと彼の腰が震え、悲鳴のような嬌声が上がったかと思うと熱い液体が口内へと溢れて来た。
 確かに、マズイ。だが、バーナビーの涙の浮かんだ顔が溜まらなく愛おしい。
 最後に残るものまで吸い取ると、びくびくと彼の体全体が震えて快感を示した。
 こくん、と飲み下す。
「こてつ、さ、んっ、これ、早くっ」
 テーブルの上に置いてあったミネラルウォーターを、必死の顔でバーナビーが差し出して来る。
 まだ快楽で不自由であるだろう体で、だ。
「ん、平気」
「平気じゃありません! 信じられない……っ」
「バニーのもんだから、平気」
「……やめてください、そういう天然たらし発言」
「天然じゃねぇし、お前限定だから」
「だったら、余計にやめてください」
「なんで」
「僕が持ちません……っ」
 顔を覆って、そのまま背後に倒れ込む。
 さっきと同じ体勢になっているのだが、手の合間から涙がこぼれ落ちているのが分かる。
「おい、泣くなよ」
「だって……こんなこと……あるはず、ない」
「あるんだからしょうがねぇだろ」
「夢にだって見た事ないのに」
「俺だってそうだよ」
 そして、バーナビーの両足を狭いソファの上に持ち上げて、立てさせる。
 もちろんここで終わるつもりなんてない。
 自分だって満足したい。ボトムの中で、自分の勃起は痛い程に主張している。
 緩めるもの、と思い一旦その場を立つと、不安気な涙に濡れた目が自分を追って来た。
「ちょっと待ってろ。痛い思いはさせたくねぇからな」
 そして、キッチンからオリーブオイルを持って来る。他にもオイルはあったけれども、これが一番マシな気がしたのだ。
 それを掌にこぼし、彼の後孔へと塗り込める。
「……っ」
「分かってるよな? 男同士のセックス」
「は……い……」
 知ってて良かったと胸をなで下ろす。なにせ、使う場所が場所だ。知らないで抵抗でもされれば面倒な事になっただろう。
 ゆるゆると周囲を撫で、彼の表情を伺う。気持ち悪い、と言う顔はしていない。その代わりに気持ち良い顔でもない。なんとも言えない顔だ。
 だが間違いなくこの後、苦痛を強いる事になるだろう。それは申し訳なかったけれども、一応は虎徹も男同士のセックスについては調べている。男でも後ろで気持ち良くなれる場所があると言う事も知っていた。それを早く見つけてあげるのが早道だろうと思っている。
 ゆるく、指先だけをオイルでぬめらせて中に入れて見た。
 彼の表情は変わらない。
 大丈夫かと思い、そのまま指を深く入れて行く。
 さすがに、顔が顰められる。
「気持ち悪いか?」
「少し……」
「すまん、我慢してくれ。痛くはねぇよな?」
「それは大丈夫です」
「ちゃんとほぐしておかねぇと、大変な事になっちまうから」
「ええ」
 彼も分かっているらしい。中は熱かった。たった指一本突き入れただけなのに、それだけでまるで性器を包み込まれているような気になってしまい、勃起が更に激しくなる。
 ゆるゆると頼りない壁を撫で、その場所を探す。
 もう一本ゆっくりと差し込み、二本の指で中を広げながら壁をなぞる。
「……ん」
「しんどいか?」
「だいじょうぶ、です」
 未知の行為だ。余り無理を強いたくなかったが、こうしなければ自分が入る事は出来ない。既に自分が挿入しないと言う選択肢は消去されている。
「ひぁっ、あっ!」
「ここか」
「や、……あっ、ぁあっ!」
 ひくん、ひくん、とバーナビーの体が跳ねる。少し手触りの違う場所をさすれば、そのままに悲鳴のような嬌声が上がり、そしてびくびくと彼の体は不随意に動く。
「いや、ですそれっ、こわっ、いっ!」
「大丈夫大丈夫」
「だい…あぁっ、じょうぶ、じゃな…っん」
 だが実際、中は緩んで来ている。
 もう一本指を差し込み、三本の指で中を広げる。
「はぁっ、んっ、あっ、あぁああっ、あ、ああっ」
「もう、いいよな?」
「あ、ぁあっ、あ、あ……んっ」
 片手で自分の前をくつろげる。勃起したものを取り出すのは一苦労だったが、開放感にほっとした。
 そして、指を三本一気に引き抜く。
「ぁあ……っ」
 そして間を置かず、自分の物をそこへ押し当て、じっくりと挿入して行った。
 オイルに濡れた場所は思いの他スムーズに自分自身を飲み込んでいく。
「あ……あ、こてつ、さん……おっき……っ」
「きついか?」
「だいじょう、ぶ…っ」
 こちらの方が大丈夫ではなかった。狭い場所で締め付けられ、今すぐにでも出てしまいそうだった。それを気力で堪える。
 いきなり根本まで挿れる訳には行かない。持久戦だなと汗をぽたぽた落としながら、中へと入り込んでいく。
「あ……ぁああ……あ……」
「きつかったら、言えよ。自信ねぇけど、止めてみるから」
「は、い……でも、きもち、い……」
「そか」
 多分理性が吹っ飛んでる彼の言葉は、素直だ。
 そのまま受け取っても構うまい。
 気持ちいいのか、そうか。じわりと心に充足が生まれる。
 そのままダイレクトに体にまで感覚が滲んでくる。
「やべ、俺がいきそ」
「いって、いですよ」
「沽券に関わる」
「構わないじゃないですか」
「構うよ」
 笑うバーナビーの動きすらも、辛い。
 少しだけスピードを上げる。彼がこの調子なら大丈夫だろうと思えたのだ。
「あ……ああぁっ!」
 敏感な場所を掠ったらしい、締め付けが強くなる。
「待てって」
「無理…っ」
 そして、ずるりと根本までを挿入した。
「は……っ、やべ」
「中……すご、い。虎徹さんが……まさか」
「まさか、じゃねぇよ。お前よすぎ。いきそ」
「いってください」
「まだ待てよ」
「だって、一回で終わりなんてこと、しないでしょう?」
「……まあ、そうだな」
 そして、ゆさっと彼を揺さぶった。
 浅く抜き挿しする。
「あ…」
 何度か繰り返し、それだけで虎徹はいっぱいいっぱいだ。
「すまん」
 それから、まだ馴染ませる程度の動きしかしていないのに、深い場所から浅い場所までを急速に動き始めた。
「あ…ああっ、あ、んっあ、あっ」
 急速な快感にバーナビーも付いて行けていない。頭を振り乱し、手を伸ばして来る。
 前屈みの自分の背中に手を回し、自分を抱きしめて来る。
 手の温度が高い。彼が発熱でもしているようだ。
 そんなものにすら反応する。
「悪ぃ、いく」
「は、い…っ」
 幾度か早い抜き挿しした後、最奥でとまり、どくんどくんと幾度かに分けて吐精する。
 こんなに早いのなんて、記憶にない。もっともこんな体温のある接触自体が久しぶりだった訳だが。
「ん……っ」
 それに感じ、バーナビーも軽く吐精したようだった。
 腹部が濡れる。
 一度いった事で、余裕が出来た。
 それからは、バーナビーを翻弄することに夢中になった。
 弱い場所ばかりを付き悲鳴のような声を上げさせ、何度もいかせ、そして深い場所から浅い場所まで余すとこなく刺激し、内側を蹂躙した。
 キスは飽きる程与え、首筋から胸元へかけてはキスマークと噛み後だらけだ。そのいちいちにも彼は反応を示した。
 ひどい充足感と共に、バーナビーが軽く三度はいった後で、自分も吐精する。
 中に出してしまった面倒さは、その後のバスタイムで更に楽しいものとなった。
 中を掻き出す作業をしている内に彼は感じ始め、そのまま再びの交接。
 音が響くのを嫌がるくせに声は我慢できなくて、彼は泣き出してしまった。
 さすがにやりすぎたかと思いながら、彼の体を清めてベッドへと連れて上がった。
 時刻はそれでもまだ夕刻だった。



「昼、食ってねぇよな」
「ええ……でも、何も食べられる気がしません」
「俺もだ」
 シングルのベッドで横たわり、思わず二人で顔を見合わせくすくすと笑う。
 幸せが胸に満ちている。
 本当なら、昨日得られていた幸せだった。
 無駄に一日を過ごしてしまった。
 バーナビーにも不安を与えてしまった。
 額に、キスをひとつ。
 そして「ごめんな」と告げる。
「もうあんな飲み方はしねぇから」
「もちろんですよ。僕が飲ませません」
「まあ……お前と一緒の時なら、飲んでもいいかな」
「なんで?」
「酔ってセックスしたら、いいっつうじゃん」
「……っ」
 顔を真っ赤にして、彼はケットの中に潜り込んでしまった。
「おい、バニー」
「知りません」
「なんでだよ」
「あれだけで僕はいっぱいいっぱいです。虎徹さんがこれ以上を望むんであれば、他の人にしてください」
「他の人って、お前なぁ。そりゃあねぇだろ」
 ケットの中から引っ張りだして、今度は唇にキスをする。
「俺が他のヤツ抱いてもいいんだ?」
 にっと至近で笑ってやる。
 その表情は、見物だった。
「……知りません」
 ぎゅ、と抱きしめる。
 それだけでもう、幸せでたまらなかった。
 ああ、本当に昨日の夜の自分達は何をしていたのだろう。
 こんな幸せを逃して、バカのように酔っぱらって。
 

 バーナビーの事が好きでたまらない。
 彼を手放すものか、と虎徹は思った。
2011.8.4
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