抑圧されていた分だけ、解放されればもう止められる筈もなかった。
　ルルーシュの服を脱がせると、そのなめらかな肌に手を滑らせ、その感触を楽しむ。唇は首筋から徐々に下に降りて行き、小さく尖った部分へたどり着いた。
「……っん」
　ちいさな喘ぎが可愛い。それど同時に、こちらの官能を刺激する。
　全身にぞくぞくと走る興奮に、つい尖りへと歯を立てた。
「んっ、あ」
　甘く噛んだ。彼はびくりと震え、甘い声を口にする。そのままこりこりとした部分を舌や歯で愛撫すると、遠慮なく甘い声はわき出して来た。
　スザクは自制心を試される事になる。このまますぐにでも抱いて、揺さぶって、快楽を得たい。だがもっと彼をとろとろに甘やかして甘い声を上げさせたい。二者択一の選択は、後者を取った。自分には我慢を強いる事になった。
　だがそれでも、彼の体に触れているだけでも息が上がりそうな程興奮する。
　なめらかについた筋肉。なのに、薄い体。
　知らず上がっていた息が、彼の肌を舐める。
　あばらの薄く浮いた場所を手のひらで撫でた後、舌で愛撫する。
「…っああっ、あっ」
　びくんっ、と彼の体が弾む。これだけで、この反応。部屋の温度が上がっていく気がする。
　下肢の服も脱ぎ捨てさせると、そこはしっかりと快楽の反応を示していた。
　自分だってもう窮屈だ。
　自分も全て服を脱ぎ捨てると、その様子をルルーシュはぼんやりとした視線で見ていた。
「待ってね、ルルーシュ」
　柔らかく言うと、自分の服を床に落とす。
　そして、再び彼に覆い被さった。
　彼の足はまだ床に落ちたままだ。座ったまま倒れた姿勢だが、このままでも良い気がした。
　丁寧に舌であちこちを愛撫する。手のひらは髪を梳き、うっすら汗の滲んだ肌を撫でた。
――これが作りものだなんて、嘘だ。
　誰よりも人らしい。
「ああっ……すざ、く」
　勃起した場所に舌を絡めると、慌てたような彼の声が甘く響いた。
　根本から先端まで、尖らせた舌先で愛撫する。先端にはぷくりと透明の液体が滲み出し、小さな球体をつくっていた。甘露のようにそれを舐め取ると、先端を舌を大きく使って舐める。
「や……ああっ、あっ」
　ルルーシュの手が、自分の髪をやわく掴む。
　快楽の印か、それともやめて欲しいのか。
　反応を見ていれば、前者だとしか思えない。
　だから遠慮せずに愛撫を続ける。根本を手でさすり、先端だけを口に含んでぐちゅぐちゅと唾液の音をわざとさせ、舐め回す。
　そのたびに腰が跳ね、彼の体中が快楽に震えていた。
　ちらり、と視線を上げると肌は淡いピンクに染まっている。
　一気にスザクの心臓が早鐘を打ち始めた。
「ごめん、待てないや」
　もう少し甘やかしたかった。泣くくらいまで甘やかしてとろとろにしてしまいたかったけれども、スザクの我慢が堰を切った。
　そのまま、後背へと手を伸ばす。そこは本来簡単に挿入出来る筈のない場所だが、するりと指が飲み込まれて行った。
「ああ…っ」
　ああ、と思う。楽でいいのだろうと思う。だが、手間を掛けてほぐして、彼に少しずつの快感を与えたくもあった。彼が人ではないのだと違う場所を見つけてしまうと、自分の心に少しの落胆が落ちる。
　しかし、それでも欲望は止まらない。
　入り込んだ指はぬるりとした内壁をやわやわさすり、彼に嬌声を上げさせる。そして、前に知った彼の気持ち良い場所……一カ所だけ、違う感覚のする場所に指を触れさせ若干強めにさすり上げれば、ルルーシュは悲鳴のような声を上げた。
「気持ちいい？」
「ああ……っ、あ、い、い……っ」
　整わない息をなんとか整えようとしながら、彼は自分の問いに素直に答える。
　その姿が愛おしくて、片手で抱きしめた。そして、指をもう一本増やす。
「だい、じょうぶだから」
「でもこうしたいんだ」
「……スザク」
　彼はキスを求めて来た。素直にスザクはそれに応じる。
　唇を重ね、舌を絡め合いながらも、指は巧みに動かし続けた。指だけでいってしまうのではないかと思われる程の、強い締め付けと内側のうねり。
　自分のものを入れたら、と思えばこくりと喉が鳴る。
「ん、は……っ」
「は……っ」
　上がった息そのままに、指を引き抜いた。
　そして自分の完全に勃起したものを、その場所へ当てる。
「……すざく」
「うん、大丈夫だから」
　こくり、と小さく頷く姿が愛らしい。
　そのまま、ずるりとスザクのものは飲み込まれて行った。
　狭い。して、ひどい締め付けだ。
「……くっ」
「あ、ああ、あああっ」
　以前とはまるで違った。あの時はルルーシュがその気で体もその準備を行っていたのだろう。今だってそうだとも言える。でも彼の意志から始められた行為ではない。その違いだろうか？
　だがそんな事は考えるだけ不毛だった。彼を人として扱いたいスザクに取っては邪魔な思考でしかない。打ち払い、快楽だけに没頭した。
　じりじりと突き入れたものが最奥に達する。ぴたりと肌がくっつき、そこで一つ大きな息を吐き出した。
　うねるような内側の動きだけで持っていかれそうだ。
「ルルーシュ、ルルーシュ」
「スザク……っ、はや、く」
「ああ」
　ほんの小さな動きから始めた。
　少しだけ抜き、そして最奥を突く。その繰り返しを行っていく内に、ルルーシュはもどかしさからか腰を動かし始める。
「ダメだよ、ルルーシュ」
　その動きを制し、腰を持つ。そして一度大きく抜くと長いストロークで奥までを貫いた。
「あああ――っ」
　その動きを幾度か繰り返し、そして思い出したようにルルーシュの弱い場所を突く。
「や、ああっ、あああっ、あっ」
　シーツを握っていた手は、いつの間にかスザクの背中に回されていた。汗で滑るそれを必死で幾度も元に戻し、構わないからと爪を立てさせる。
　その刺激すらも快楽の元になった。
　ひどく締まりの良い場所と、熱い温度。
　繰り返す擦る動きはスザクの脳を茹だらせるのに十分だった。
「ルルーシュ、ルルーシュ」
　スザクはバカになったように、彼の名前しか呼べない。
　打ち付けるリズムが早くなる。精液がせり上がってくる感覚がする。
　もう、いきそうだ。
「ルルーシュ」
「すざ、ああっ、あ、んっ」
　彼は薄く涙を浮かべ、自分に必死で抱きついて来る。
「ごめ、もう……っ」
「ん…っ」
　返事なのか喘ぎなのか分からない声を聞いてから、もっとも奥をスザクは抉った。そして、自分の欲を解放する。
「は………っ」
「あああっ」
　内側の熱に反応してか、ルルーシュも白濁を飛ばす。
　長い吐精だったが、自分のものが萎える気配はまるでなかった。ルルーシュのものも勃起したままだ。
　そのまま、一呼吸の休憩を置いて、同じ動きを再開させた。



　半ばベッドから落ちた状態で二度、きちんとベッドに上がって一度、お互いに抱き合って精を出し合った。
　ここには窓もない。しらじらとついた蛍光灯の明かりの下、べたべたの体で抱き合って横になる。
　昨日、必死で耐えていた筈のものだった。だがたやすくその壁は破られた。
　もう無理だろうとスザクは思う。腕の中でまだ残る快楽に、時折ひくりと跳ねるルルーシュの事が愛おしくてならない。抱かない自信などなかった。
「シャワー、浴びないとね」
「あ、ああ……」
　どこかぼんやりと、ルルーシュは答える。
　まだ熱に浮かされているような顔だった。
　その顔に、また欲望が刺激される。
　狭いが設置してあるシャワールームへと向かう。
　そこでも、結局スザクは我慢が出来なかった。ルルーシュもまたそうだった。彼の方から口付けを求められ、そしてスザクはそれに応え、体を洗いながら彼の体を再び堪能した。
　まだ後孔はゆるんだままだ、飲み込むのは簡単な事だった。
「……あっ、ああ」
　シャワールームは、声が響く。
　換気口を伝って他の部屋にまで伝わるかも知れない。
　だが、スザクはルルーシュの甘い声を聞いていたかった。
　突き動かす動きをしながら、彼の喘ぎを糧にますます欲望は膨らむ。
「も……だめ、スザ…っ」
「ダメ、だよ…まだ……」
「ああ、あ、んっ」
　簡単な解放を許さず、性器の根本を握り締めると動きを再開させる。ルルーシュはもがくようにして狭いシャワールームのタイルの壁を引っ掻いていた。
　後背から交わっているから、彼には支えになる場所がないのだ。
「ああ……っ、はや、く……スザク……スザクっ」
「……っ」
　急速に、欲望が加速する。
　名を呼ばれる度に、快楽が増す。
　彼が自分だけを求めている。彼の意志で求めているのだと知った今、それは甘い甘い睦言と同じだった。
「ル、ルーシュ……っ」
　最奥へと、スザクは再び吐精した。性器を緩めてやると、そのままルルーシュも精を吐き出す。
「あ、………っ」
　そのまま崩れ落ちそうになったからだを、スザクは慌てて抱きしめた。
「好きだよ、ルルーシュ」
　そして、耳元で囁く。
　ルルーシュの意識はもう殆どこの世界にとどまっていないようだった。
　そのための「機械」であるはずなのに、彼の快楽はもう頂点を極めてしまったようで、ずるずると体中の力が抜けてゆく。
　奥へ吐き出した自分のものを掻きだし、彼の体を綺麗にすると、そのまま彼を抱きかかえて部屋へ戻った。
　残念な事にベッドは使用出来るような状態ではない。
　はぎ取ったシーツをルルーシュに被せ、そのまま隣のゲストルームへと移動した。
　あの部屋をそのままにしておく訳にはいかないだろう。ぐったり寝込んだ彼を置いて、元の部屋へと戻り換気扇を回す。そしてどろどろに汚れた下敷きのシーツを剥がすと、そのままランドリーへ続く扉を開き押し込んだ。



　もう、取り返しは付かないな、とスザクは思った。
　ルルーシュの部屋に戻るまえに、自分の部屋へ一度戻る。そこにはC.C.がソファに横になったままだった。眠っているのかもしれない。だが、その予想は裏切られた。
「ここまで聞こえていたぞ」
「――すまない」
「あれがそんなに気に入ったか？」
「ああ、好きだ。離したくない」
「セクサロイドだ」
「言っておくけど、僕が彼を抱いたのは今日で二度目だ。それ以外は手を出していない」
「へぇ」
　意外そうな声が聞こえて、彼女はようやく自分の方を向いた。
「それで、何故欲しいと思った？」
「彼が好きだからだよ」
　そう答えれば、彼女は笑った。いかにもおかしそうに、派手に。



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